総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。
今回は前回の続き。
最悪のタイミング
年末のホテルの駐車場。
目の前に広がる現実とゲームの世界が交差する世界。
その場にいるのは、息子、父、母、そして
テンプルナイトとブレードダンサー。
我の家は、簡潔に話すと「武家」のような家だ。
周りからすると漫画のように見えるかもしれないのだが、家族会議をする時は畳の部屋で正座で話す。
敬語は勿論の事、年末年始の挨拶なども着物を着たりなど。
つまりはゲームのような、そんなキャッチーで軽い感じのものとは全く無縁の家庭なのだ。
そんな父母に向かって、「こちら友人のツクヨミ、職はテンプルナイト」なんぞ言った日には我の世界の終わりが来るに違いない。
父「ん?知り合いか?」
我が慌ててフォローに入ろうとしたところ、ここで大人力を発揮したのは再びツクヨミであった。
ツクヨミ「あ、◯◯◯さんにいつもお世話になっております、×××です。私は△△△(リアル職業)をやっておりまして、いつも◯◯◯さんとは仲良くさせてもらっているんです^^」
母「いつもお世話になっております」
現実とゲーム世界の狭間のカオスな状況を、笑顔を変えずにさらりと回避して自然な流れを作るツクヨミ。
何という大人力。
これぞ大人力。
「流石ツクヨミ、ナイス回避」と心の中でガッツポーズをする。
ツクヨミとはリアルネームを知っている仲。
普段は「反王」「ギル(ツクヨミ)」と呼び合う仲なのだが、こう改めて周りに人がいる状況でリアルネームで呼び合うと逆に不思議な感じがする。
これもMMOあるあるの一つだろう。
ツクヨミがアシストしてくれたこの流れ、このビッグウェーブに乗るしかない。
我もうまい事話を合わせて会話の流れを作る。
ケンラウヘル「以前話した、あの方だよ、前に旅行で一緒に行ったって」
母「ああ!あの方なのね!その節はお世話になりまして」
実は我は、ツクヨミの話を父母にはよくしていたのだ。
去年ツクヨミたちに連れて行ってもらった、鹿児島3日間旅行。
※本当にブログに書けてなくて申し訳ない。
その際、ツクヨミにリアルについて相談させてもらった事がある。
とても親身というか、距離感を感じさせない喋り方、そして論理的且つ客観的な分析。
あの鹿児島でツクヨミ、ギルガメッシュという人間がどんな人なのか、どんな人生を歩んできたのかを、会って間もない我に対し、事細かに晒け出してくれたのだ。
その時に初めて、我も自分がどんな何という名前で、どんな事をしていて、どんな人生を送ってきたかを話した。
そう、リネレボの中で我のリアルについて全て話したのは、ツクヨミなのだ。
自然な世間話から「ではそろそろ行きますね」という自然な流れになった。
息子に対し「今度ご飯食べに行こうねー」と手を振るツクヨミ。
もう何というか、純粋さの化身というか、間違いなくリアルにオーラが会ったら金色に輝いているだろう。
ちょこちょことツクヨミが「rysterさん」という単語を出していた事を除けば完璧な流れ。
この際そんな細かいことは気にならない。
ケンラウヘル「では、また年末に」
ツクヨミとは2019年が始まる前に一度夕飯を共にすることは決まっていた。
ツクヨミ「はい、また!ではこれで!」
父「では、失礼します」
母「良いお年を」
完璧だ。
完璧な流れ。
この2018年最大の修羅場を切り抜けた。
この難易度ナイトメアのクエストをクリアした我を褒めたい、そしてツクヨミに感謝したい。
しかし、最後の最後で伏せていたトラップカードがオープン。
ryster「まさか王族の方々にお会いできるとは光栄です」
ケンラウヘル「よいお年を!!!!!」
かくして、あまりにも偶然が重なったこの出会いは幕を閉じたので会った。
本当の修羅場
毎年恒例のパーティー。
顔なじみに挨拶をしたり、知り合いの者から知り合いを紹介されたり。
詳しくは伏せておくが、こんな感じの場所でパーティーは開かれるのだ。
流石一流のホテルだけあって、食事も最高に美味しい。
メインディッシュもこんな感じだ。
年に一回の御馳走である。
だがよくよく考えると、リネレボを始めてからというもの、これより美味い肉を何枚食べただろうか。
2018年は食事についても物凄い経験や感動をさせられたため、この肉の感動は薄れる。
と思いきや、それでもやっぱり食べたら美味しいわけで。
すき家の牛皿定食とは比較にならない。
※まぁすき家はすき家で美味しいのだが。
食事も終わり、デザートを食している、その時であった。
我の母がツクヨミについて話し始めたのだ。
とても立派な方ね、失礼のないようにしなくちゃダメだからね、そんな感じの流れで話が始まる。
そこに父も入ってくる。
嫌な予感がする。
話をグイグイと深掘りし始めたのだ。
これはいけない、話題を変えなくてはならない。
自然な感じで会話の流れを断ち切って違う話題にするが、無理やり話題を戻される。
話はツクヨミについてで持ちきりだ。
ここは妥協しよう。
いい、それでいい。
そのままそのツクヨミレールから離れてはならない、脱線させてはならない。
我は逆にツクヨミについて色々と話した。
しかし、既にツクヨミについては父母はある程度の知識を持っているのだ。
ダメだ、絶対にあっちの方に話題を持って行ってはならぬ。
しかし、どうしても父母の興味は違う方に注がれていた。
父「そういえば」
父「お前の事を王様とか呼んでいた”りすたあ”さんというのはどんな人なんだ?」
終わった。
世界が終わった。
我の目の前が一瞬真っ白になる。
これは偏見になるのだが、父は本当に「ザ・武家」みたいな人間であり、男の髪の毛の色が茶髪というだけでも不良じゃないかと言うような、古い昭和の人間である。
我の人生でもなかなか髪の毛の色が黒以外の人間というのはあまり接して来なかった。
父の目には、我がどんな人間と絡んでいるのかに興味を持っている。
「元Revoで今はThe Avengersにいて戦闘力の高いブレードダンサー」なんて事は言えない。
とにかく、「ゲーム」という繋がりを隠した状態でrysterの説明をしなくてはならない。
絶対に無理だと思って話題をそらそうとしても「誰なんだ」の一点張り。
しかし、ここで我は、2018年一番の頭の回転力を発揮することになる。
頭の中でパッと整理する。
問題は2点だ。
ひとつ、彼が何者なのか。
ひとつ、何故我を王と呼んでいるのか。
というかそもそも「リスター」って名前の時点でおかしい。
問題は3点、これを論理的に、そして刹那に我は組み上げることができたのだ。
説明のターン
本名『リ・スータン』
・中国人と日本人のハーフ
・幼少の頃から日本に住んでいるため日本語はペラペラ
・中国語の他に英語、フランス語が喋れる
・長野の白馬にあるペンションを経営している
・今は太陽光発電事業に注目していて投資もしている
・よく下北沢で趣味のDJをしており、ダンススクールの講師もしている
・イグザイルの新規メンバーオーディションで最終選考まで残った
・趣味は将棋でオンライン将棋をよく我とプレイする
・そこで我が王をよく使って攻めてくるから親しみを込めて「王」と呼んでいる
当たり前だが、全て嘘である。
しかし、我のはじき出した最適解、考えるよりも勝手に口から出てきたこの説明。
自分でも意味がわからないが、父母をその畳み掛けるようないかにも全部知っているかのような細かい設定で捲し立て、質問させる機会を与えない。
父と母のキャパシティをオーバーする情報量を与え続ける事で、さっき喋った設定を記憶に留めておかせない。
これが完璧に決まった。
最終的には、
父「経営にダンスと、若いのに凄いな」
母「リーさんに失礼のないようにね」
という締めくくりで完全に幕を閉じたのであった。
リアルとゲーム世界の狭間と言うのはなかなか難しいところ。
だが共通して言えるのは、互いに人間であるということ。
リアルだけれどもゲームの名前で呼ばれたり、逆にゲーム仲間とゲームを超えてリアル友達になったりなど。
やはりオンラインゲーム、そしてMMO、この世界はまだまだ楽しめると確信した今日この頃であった。
今日の大人力
父「今日は楽しかったな、また来年も来れたらいいな」
母「そうですね」
ケンラウヘル「では車で帰るので、これで」
息子「ねぇねぇ」
ケンラウヘル「ん?」
息子「ケンラウヘルってなに?」
息子「うん、わかった!」
これが本当の大人力。
以上