総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。
前回の続きのブログとなる。
~前回のあらすじ~
我が軍の寡黙なウォーロード、まーも。
要塞戦にかける思いは熱く、仲間を救うためには犠牲も辞さぬ男。
口数少ない彼が唯一持っていたアイデンティティは、『我が軍最強であり孤高のウォーロード』。
そんな中で唐突にやってきた他サーバーからの移住者2名、通称外国人助っ人、その2名共にウォーロードだ。
最初はまーもに弟分が出来た等と我らは言っていたが、この2名の躍進は凄まじく、2名とも1か月するかしないかで背景装備コンプリート、戦闘力60万超えという、まさに鎖国時代の黒船を彷彿とさせるものであった。
寡黙で多くはチャットせぬまーも、それとは対称的に饒舌な外国人助っ人ウォーロード、ウルス★とジークフリート。
この2名は過去にリネレボを引退しようとしていた程、リネレボが嫌いになっていた。
しかし、我のブログやTwitterを見て、高い戦闘力を誇るキャラクターを捨ててまで来た志や熱意の高い男たちである。
ちなみにウルスについては、我が軍の正式入隊が決まった直後、前キャラを惜しげもなく削除している。
気合と本気度が桁外れていた。
我は他サーバーから来た者に対しては本気度を確認するため必ず「仮入隊」としている。
仮入隊という期間は、戦闘力もそうだが、共に楽しめるかどうか、すなわち「コミュニケーション能力」も問われるということになる。
ウルス、ジークは共に饒舌であった。
彼らは元々別々のサーバーで、各サーバーの上位血盟にいた者だ。
要塞戦やPKの知識なども我とは比べ物にならぬ程所持していた。
我はリネレボサービス開始初日からこの血盟を創った故、他血盟の雰囲気などは知らないし、他サーバーの話になったらもっと分からぬ事ばかりだ。
彼らの話は我、いや、我が軍全員にとって魅力的な内容で溢れていた。
要塞戦ではどのように戦っていたのか、PKや戦争時で必ず守っていたルール、戦闘力の上げ方のコツ、普段の会話は我が軍とどういう所が違うのかなど。
我が軍からの質問も溢れていた。
ウォーロードについても、ウルスやジークへ色々と聞くこともあった。
それについては特に問題ないのだが、まーもからすると、ずっとウォーロードであり、反王親衛隊唯一のウォーロードであった自負すらも崩される展開であったろう。
元々寡黙であったまーもは、よりその影を薄めていってしまった。
要塞戦などでどのような作戦でいくか、パーティはどうするか等、我とシゲルマツザキで会話していた時のことだ。
ふと、まーもについての話題となった。
ケンラウヘル:まーもだが…あれはちと可哀想だな。
シゲル:そうだな。確かにウォーロードの中ではうちで戦闘力最高かもしれんが、抜かれるのも時間の問題か。
ケンラウヘル:しかもジークに至っては、口上で「一番槍」を名乗り始めたからな。
年内の目標70万達成。
— ジークフリート@ケンラウヘルL2R (@siegfried_l2r) 2017年12月24日
イベントに依存した結果かも知れぬが素直に喜ぼう。
我は反王親衛隊の一番槍、赤髪のジークフリートである。 pic.twitter.com/Lw6bZXsmKz
シゲル:だな。いや、やる気もあるし、流石一度育てたキャラクターを削除してまで来た気構えだ。しかも人格も温厚で惜しげもなく色々教えてくれる。まさに非の打ちどころがない。
ケンラウヘル:うむ。あれだな、外国人助っ人2名共にいい奴で且つ主戦力になってきたからな。
シゲル:しかし…俺がまーもの立場だったら凄いプレッシャーで嫌だろうな。
ケンラウヘル:比較しなくていいとは思うが、まぁその気持ちも分からなくはない。我々が「ウォーロードについての質問はまーもにしろ」っていうのもおかしい話だしな。
シゲル:うむ、まーもが萎えなければいいが…
まーもは反王親衛隊初期メンバーだ。
まーもが戦闘力65万までいくのにサービス開始から約3か月かかった。
しかし、後続の外国人助っ人ウォーロード2名は、1か月程度で60万を超えてきている。
まーもについて気にしていたのは我とシゲル以外にもいた。
しかし、何となくアンタッチャブルな、そこに触れたらまーもを傷付けてしまうのではないか。
そんな空気が支配していた。
これは12月入ってすぐの時だろうか。
我が軍では何故か無駄に掲示板に画像を張り付けては大喜利をやる風習ができていた。
何故か「祖国光はどのイラストがいいのか」(過去ブログ参照)という話題となり、祖国光っぽいイラストを画像検索するのだが、話がどんどん脱線していくのが我が軍だ。
いきなり、
『水魅の陣』とか書かれたり。
いや、スピード感ゼロだろと。
『ブレダン四天王』
『反王のトレハン』
こんな具合で大喜利が連続投稿される。
スマホで誰かが何かを書いた際通知が来るのだが、画像貼り付けの通知が来たら9割は大喜利の合図だ。
そんな中、ジークフリートが問題の一枚を投稿した。
ジェット・リー主演『ウォーロード~男たちの誓い~』
何だよこの映画!こんな名前の映画あったのかよ!と、我が軍ではケラケラと子供のように笑いながらこの画像を見て話していた。
ジークフリート:しかもウォーロード三兄弟です。
ウルス:本当だwwwww
あんぬ:wwwwwwww
ガラ:wwwwwww
ぽーらすたー:どっから見つけたんだよこれwwwwww
ケンラウヘル:我が軍のウォーロード三兄弟は既に映画化していたのか。
我も思わず笑ってしまった。
うまい具合に我が軍の状況と被ったイラストに盛り上がる我が軍。
しかし、我はある事に気付いてしまったのだ。
今一度このポスターを見て欲しい。
サブタイトルからして、この3名は勇猛果敢な戦士なのであろう。
しっかりと前を見据え、威風堂々たる姿を醸し出している。
が、1名だけ明らかにバツが悪そうな顔をしている者がいる。
ジェット・リーである。
明らかに、明らかに納得のいっていない顔をしている。
この2名はしっかりと前を見据え、ウォーロードたる勇ましさを感じることができる。
【男たちの誓い】というサブタイトルに適した、鋭い眼差し、そして覚悟を決めた男の顔だ。
でも明らかに納得いっていない奴が1名いる。
我の頭の中でふとこの3名のキャスティングが頭を過ぎる。
何か複雑なピースが絡まったパズルというか、決して解いてはいけないパズルが組み合わさったというか。
アンタッチャブルな部分を忘れて思わず口が滑ってしまった。
ケンラウヘル:
この画像のキャスティングをうちに当てはめると、
アンディ・ラウがウルスで、金城武がジークだろう。
他サーバーから移籍してきた上で将来を見据え、未来に希望を持っている顔をしている。
んで、
ケンラウヘル:
目を合わせずに不満たらたらなのがまーもだな。
本能で出てしまった言葉だった。
まーもがどう思うかも分からず、今まで触れてはいけない、けれども皆気付いていたウォーロード三兄弟の歪を皆の前で明らかにしてしまったのだ。
我が触れてしまった故、そこからどんどん会話が弾む弾む、ログが止まらない状態になった。
けすとれる:
反王様、今ウォーロードの画像検索したのですが、
けすとれる:
まーもさんだけ、やっぱり納得いっていないようです!
後から来たとんでもない成長を見せるウォーロードたちに詰め寄られるまーもの図だ。
なんとも絶妙な顔をしている。
今まで触れられなかった分、まーもイジりは加速していった。
勝手に心の声をアフレコされるまーも。
うまく笑えないまーも。
ここまでの下りはまーもが不在の状態で話していたのだが、ついにまーも本人がログインしたのだ。
まーも:こんにちはー
息を飲む面々。
まーもも恐らくこの流れのログを見直しているはずだ。
まーも:・・・・・・・
まーも:
いや、実際きっついっすよ、まじでw
とうとうあの寡黙なまーもが本音を漏らしたのだ。
恐らく我慢していたのだろう。
別にウルスやジークに悪気がないことは当然理解しているが、やはりプレッシャーは感じていたのだろう。
まーもが「w」を使ったのは初めてではなかろうか?
このまーもの発言で「お墨付き」を貰ったかの如く、大喜利が加速していく。
そしてぽーらすたーが悪ノリで加工した雑コラがこれだ。
さすがは我が軍の総務部長ぽーらすたー、確かな加工技術。
そして何故かまーもだけ「ジェット・まーも」になっていることに皆気付く。
アンタッチャブルなキャラクターから突如いじられキャラになり始めたのだ。
そしてウォーロード三兄弟の次男こと、ウルスの一言が彼の生末を決定付ける。
とうとう原型すら留めていない、尊敬の念を込めているのかいないのかさっぱり分からんこのパワーワードに会話のピークが最高潮に達する。
我も思わず腹を抱えて笑ってしまった。
サービス開始から11月末までの3か月。
寡黙で影を潜めていた男、まーも。
ウォーロード外国人助っ人2名に「唯一のウォーロード」としてのアイデンティティも剥奪された男、まーも。
チャットにもあまり現れず、いるかいないか分からない男、まーも。
この日から彼のケンラウヘルサーバー人生は大きく転換した。
まず最初に、何か我が軍の中では、
「ジェット兄さんはウォーロード三兄弟の中で1番最初に必ず死ぬ」という勝手な設定が浸透し始める。
勇猛果敢な兄が殺され、怒りを露わにする次男と三男。
長男は次男・三男の能力に嫉妬し、我慢し続けてきた。
優秀な次男・三男から「兄さん」と呼ばれるたびに劣等感を感じてきた。
裏では馬鹿にされているのでは、そんな風に思っていた事もあった。
しかし、そんな戦闘力などという上辺だけの数値ではなく、次男・三男は長男を心から敬っていたのだ。
ベタだが熱い設定だ。
いや、まぁただの妄想なんだが。
勝手に皆の中でのまーもことジェット兄さん像が作られていく。
そして次には、
まーものデッドログが流れた瞬間に皆で叫ぶ。
というか、全員ショートカット登録済み。
ちなみに要塞戦では皆チャット禁止なのだが、唯一この発言だけは発言を許可している。
何なら勝手に
ウォーロード三兄弟Tシャツがデザインされる。
(ちょっと我も欲しい)
最終的には
自らをジェットと名乗り始めるようになる。
過去、様々なMMOやオンラインゲームで人と絡んできたが、ここまで寡黙な人間が突如チームの人気者になる事例はなかった。
偶然張り付けた画像1枚で話が膨らみ、当事者の思惑とは全く違った方向で受け入れられ、それがいつの間にかアイデンティティとなり、皆から慕われる。
これぞMMOならではの楽しみ方の1つではなかろうか。
我が軍のこの一連の出来事、後の「ジェットの変」ほど勢いだけで笑ったことはなかった。
とまぁ、書いてみたものの、文字に起こしたら何書いているのか自分でもさっぱりわからなくなってきたのは置いておこう。
とにもかくにも。
こうしてジェットの変以降、ジェット兄さんは活発にチャットをするようになった。
ウォーロード三兄弟も腹を割って話せるようになり、こうして本当の兄弟の絆が結ばれたのである。
さて、今度この映画を見て感想でも書くとしようか。
■今日の外国人助っ人
外国人助っ人のウルス・ジークの急激な成長。
他サーバー勢は本当にとんでもないスピードで戦闘力を上げる。
何人も入隊を申し込んでくる者はいるのだが、1名、熱意の溢れる者がいた。
ただ、実は彼は一度我が入隊を断ったのだ。
理由としては2つある。
1つは人数がいっぱいであったこと。
そしてもう1つは、レベル一桁のキャラであったため、我はいつもの「ただ入りたい輩」だと思ったからだ。
しかし、彼は違った。
戦闘力を本気で上げる、私は本当に反王親衛隊に入ってプレイしたい、また上げて連絡する。
そう言ってきた。
ちなみにここまでは何名かいた。
戦闘力を上げると言って、そのまま音沙汰なし。
またそのパターンであろう、我は全く期待していなかった。
彼がケンラウヘルサーバーにキャラクターを作って3日目くらいだったろうか。
既に我は彼の存在を忘れていた。
そして唐突にささやきが来る。
反王親衛隊の血盟レベルが上がって空きが1つできている事、そして自分の戦闘力を見て欲しい、もしこれでも入隊できなければ更に戦闘力を上げて再度連絡すると。
彼のキャラクターを見て目を疑った。
3日目にして背景装備を全て揃え、戦闘力は30万近く。
武器に至っては+17までになっていた。
こいつは本気だ。
我は仮入隊という条件付きで彼を入れることにした。
ケンラウヘル:
総員、本日より新入りが1名入る。
他サーバーからの外国人助っ人だ。
既に3日目にして戦闘力30万弱という驚異の戦闘力、ウルスやジークを超えるペースを出している。
皆、よろしく頼む。
ちなみに
ケンラウヘル:
ウォーロードだ。
ジェット兄さんの苦悩は続く。
以上。