総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。
ふと、気付いた事がある。
我自身の話をしたことがない。
ちょっと思う所があり、我の過去について書く事を決めた。
リネージュ1との出会い
我の初めて触ったMMO、これについては話したことはあると思う。
リネージュ1だ。
そもそも何故リネージュ1をやり始めたのか。
元々ゲームは好きだったのだが、昔は今のようにネット環境が整っているわけではなかった。
その中で「ファイナルファンタジー11」というゲームがあり、パソコンでできるという話であった。
そしてそこの謳い文句にあった「オンラインゲーム」という言葉、とにかくネットを介して遠く離れた人たちと遊べるという認識くらいしかなかった。
意気揚々とFF11のソフトを買ってきてインストールするものの、PCのスペックが足りず、起動することすらできなかった。
そもそもPCスペックという概念すら理解できていない頃だ。
FF11をプレイするのは早々に諦めた。
その時に感じていたのは、FFができないことというよりも「オンラインで人と一緒にプレイするってどんな感じなんだろう」ということで一杯だった。
その数日後、ふと机の中にあったプロバイダの説明書と一緒に入っていたCDがあった。
それがリネージュ1の60日無料体験版CDだったのだ。
初めてのMMO
MMOは最初から訳が分からない状態で始まった。
如何せん、説明書などはないのだから。
公式サイトを調べてもよくわからない。
とりあえず、格好いいからという理由でエルフを選択した。
「歌う島」というチュートリアル用マップ。
昨今のゲームでは、自動でアナウンスが出て、どこに行けばいい、どこに行けばクエストクリアなどという誘導があると思うが、この頃は違う。
このマップに入った瞬間からいきなり放置されるのだ。
訳も分からぬまま、とりあえず敵を倒そうと街の外をうろつき、スライムを攻撃したら即死したなどというのはいい思い出だ。
※スライムや猪は”初心者キラー”と言われ、一見弱そうに見えて意外と強い。
エリアチャットで色んな人が話したりしているが、その会話に入っていいのかすらわからない。
とりあえずレベルを上げてみようと、敵を倒したりアデナを貯めたりしていた。
ハック&スラッシュのような感覚で色々とやってみたが、これという面白さは一切感じられなかった。
MMOの最初の感想は、見ず知らずの人がいるだけの、目的も良く分からないものという認識だった。
初めての出会い
初めて3日、周りで人が喋っていても良く分からないままレベルやアイテムをコツコツと積み上げていった。
今まで行けなかったダンジョンの奥にも少しずつ行けるようになった。
今回はここまで行けた、じゃあ次はここまで行こう。
こんな感じでダンジョンに行ってはアデナを貯め、街に戻ってポーションを買う、そんなことを繰り返していた。
そんな時、ふと街の宿屋に一人の女エルフが立っていた。
未だにこの名前だけは忘れない。
“質問受けます”
こういう名前のエルフが道具屋の隣の空き家前にぽつんと立っていた。
当時は「便箋」というアイテムがあって、それを地面に置いてその便箋をカーソルオーバーすると題名が読める。
その質問受けますというキャラの下には便箋が置いてあった。
便箋:初心者さんは気軽に質問してください。
こんな感じだった。
でもチャットをしていいのかどうかもわからぬ自分は、その周りをウロウロするだけであった。
そうした時、その女エルフが一言声をかけてきたのだ。
「初心者さんですか?」
周りには誰もいない。
自分に対してチャットをしているのは明白だ。
「はい」
これがMMOで初めて打った、我の最初の言葉であった。
人との繋がり
女エルフは本当に何から何まで教えてくれた。
チャットのやり方や種類、装備、狩りのやり方、マナー、そして初めてのパーティ狩り。
この時初めて、MMO、そしてオンラインゲームの楽しさを感じることができた。
その女エルフは自分以外の初心者も何名も教えていた。
それ繋がりで大規模なPTを組んで初心者ダンジョンのボスを討伐したり、かくれんぼをしたり。
チャットをしているだけでも面白かった。
MMOにハマった瞬間であった。
今まで一人でやっていたゲームとは違い、全て新鮮で、毎日のように発見があって。
こうなるといてもたってもいられず、大学に行っている間もいろいろとリネージュの情報を調べたり、動画なんかも色々と調べるようになった。
動画は当時FLASH職人という人たちがいて、FLASHを使った動画が主だった。
懐かしいのでこれを紹介しておく。
このPVは本当に格好良かった、毎日何回も見た。
この動画は“質問受けます”が教えてくれた、これ物凄い格好いいから見てみてと紹介されたのだ。
あとはこんな動画も流行った。
この動画が物凄い流行っていて、ブレイブポーションというアイテムを使用すると皆この言葉を発していたのだ。
ようやくエリアチャットでナイトたちが意味不明な顔文字を連呼していた意味が理解できた。
攻城戦
初心者エリアは確かレベル13か、15か、それくらいで強制的に話せる島へ飛ばされる。
いわゆる初心者卒業というやつだ。
思えばそこで“質問受けます”を中心としたコミュニティと約1週間くらいワイワイしていたことになる。
普通だったら3日あれば卒業なのだが、そんな事よりも皆で夜な夜な馬鹿話をしているのが楽しかった。
ある日、初心者エリア卒業間近。
”質問受けます“からある一言を言われる。
「ちょうど今日攻城戦あるから見に行こう」
確かあれはギラン城だったか、ハイネ城だったか。
よく覚えていないが、言われるままに付いて行き、途中のMOBに殺されながらもついて行った。
「邪魔にならないように門の外、横で待機しておいて」
門の中にはびっしりと、それこそ300の映画のごとく、人が隊列を為して陣形を取っている。
リネ1は「変身」というシステムがあり、その中でも超高レベルの「デスナイト変身」ができる者は神様扱いであった。
とにかく、何もしていないのにワクワクするような光景であった。
そして突如テレポートしてくる大群、攻城戦の攻めの血盟だ。
流れるような動きで、ナイトが前に立ち、後ろから綺麗な直線に並んだエルフが放つ矢の嵐、ヒールをするウィザード、そして突入の機会を伺う君主。
今まで色々なゲームをしてきたが、とにかく全てが凄かった。
圧巻、その言葉に尽きる。
ポーションを皆がぶ飲みし、赤や白や橙、そしてキャンセレーションという相手のバフを無効化する魔法のエフェクト、必死にヒールするウィザード。
先程までの静けさが一気に熱気を帯びた狂乱の場となったのだ。
初めての攻城戦、本当にすごかった、これ一人一人が見ず知らずの人間たちだと思うと、その世界の広さに更に心が躍る。
あ、あの人よく全茶(ワールドチャットの事)で時報言ってる人だ!
あ、あの人、〇〇さんの別キャラでフレンドだって言ってた!
そんな感じでワイワイとパーティチャットをしていた覚えがある。
そして沸いてきたのは、いつかこれに参加してみたい、そういう気持ちが沸いてきた。
これが自分の目指すリネージュであると確信したのだ。
”質問受けます”との約束
本気でレベルを上げて攻城戦に参加したい。
その思いで我はレベルを上げていった。
攻略情報なども読み、強化方法や効率などを考えるようになった。
初心者エリアを卒業するのも間近であった。
攻城戦という目標に向けて強くなる最中、一つだけ心残りがあった。
この人と一緒に攻城戦に出たい。
今思うと、これがMMOの面白い所だなとつくづく感慨深くなる。
目標はあれど、その中に重要な要素として「人」がいるのだ。
彼女が別キャラにメインがいるのも知っていたが、そんな対して強いわけではない。
攻城戦に一緒に出ようと誘ったものの、我が攻城戦に出たいと思うように、彼女も別にやりたい事があると断られた。
そして初心者エリア卒業の日。
別キャラ作ったりすればすぐに一緒に遊べるものなのだが、その時は何故か「完全なる別れ」的な感情が我を覆っていた。
本当にお世話になりました、チャットで伝える。
経験値は99.99%、あと一匹ゴブリンでも叩けば即座に卒業、この歌う島から強制的に飛ばされることになる。
道具屋隣の空き家の前で彼女に挨拶をする。
「頑張ってね」
と、彼女が我の前に立ち、トレード画面を開いた。
そこには色々なアイテム、そして当時の我としては見たことのないような大量のアデナであった。
普通だったら「こんなのは貰えないよ」と突っぱねるところだ。
しかし、我はそんなことよりもどうしても聞いておきたい事があった。
何故見ず知らずの自分にこんなにも親切にしてくれるのか、それが何の意味があるのか、我は聞いた。
「私はリネージュが好きだから、沢山の人に少しでも好きになって欲しい」
彼女の言葉に衝撃を受けた。
我が攻城戦で戦うのが目的だとしたら、彼女はここで初心者を育成して送り出すのが目的。
それが彼女のリネージュだったのだ。
たかがゲームなのに、他人に対してこれだけ親切にできるのは何故なのだろうか。
いや、ゲームだからこそ、仮想空間だからこそ、理想の自分を演じる、ロールプレイするべきなのだ。
これがMMOなのだ。
我の中でMMOというものの存在価値が変わった瞬間であった。
どうしても御礼がしたい、何かして欲しい事とかはないか。
チュートリアルも卒業していないような弱い我であったが、何か恩返しをしたい、むしろその恩返しのためにリネージュをするという目的でもいい、そう思って話した。
「別にいいよ、気持ちだけ貰うね」という返事が返ってくることも想定して色々と考えていた。
しかし、彼女のは何の迷いもなく、我にこう言った。
「じゃあ一つだけ約束して欲しいことがあるの」
「今度は、あなたがこの“楽しさ”を人に伝えて欲しい」
若かれし日に言われたこの言葉。
この言葉が、ゲーム内外問わず、我の核になった。
“楽しさを伝える事”とは
本来であればここで昔話は終わり、綺麗な感じで締めるべきであろう。
だが、その楽しさを伝えるという事の本当の意味を我なりに経験した事を踏まえて話す。
そこからはぐんぐん強くなった。
そして色々な出会いや別れを経験してきた。
中にはケレニスやシゲルマツザキのような、15年経っても一緒に笑いながらゲームをできるような仲間にも会うことができた。
攻城戦にも参加して目標が達成されたわけではなく、より高く、より熱くなれるコンテンツを探していった。
いつしか盟主にもなった。
その中でも我の核である「楽しさを人に伝える」という事を実践していった。
リネージュ1は結局5〜6年やっていただろうか。
しかし、楽しさを人に伝えていくにつれ、ある感情が我の中で芽生えた。
つまらない。
人に気遣いばかりして、人の事ばかりを優先し、人のためであれば何でもした。
だがそこでどこかしら見返りを求めていたのだろう。
信頼、信用。
しかしそれらは平気で裏切られる。
ここでは書けないような事件も多々あった。
だが皆んなが心配するから、楽しくなくなるからと、裏で処理していった。
それなのに当事者は知らん顔してヘラヘラと遊んでいる。
イライラした。
だが、それでも我は必死であった。
ほら、皆楽しいだろ?楽しいでしょ?と。
楽しんでくれている時は本当に我も楽しかったが、徐々におかしい事に気づいた。
我は何で人を楽しませることに必死になっているのか。
約束を果たすためか、だがそれは目的ではない。
毎日ログインしては人生相談やら問題解決やらで皆からレベル的にも置いていかれるためか、そんな事は望んでいない。
毎日ログインしてもつまらない事ばかり。
そう感じていると負のスパイラルが生まれる。
気付けば、人は散り散りになっていった。
リアルでも社会人になり、多忙という理由でログインは低下。
そしていつしかログインするのを辞めた。
楽しい事も山ほどあった、だがつまらない事の方が多くなった。
我のMMOはそこで幕を閉じた。
リネージュとの再会と反王親衛隊の誕生
MMOから離れて10年が過ぎた。
ケレニスはリネージュ時代にルームシェアをしたくらいの仲だ。
リアルでの繋がりはずっと続いていた。
シゲルマツザキは本当に1年に1回連絡し合うか否か、そんなくらいだ。
そんな日にふとケレニス、シゲルマツザキから連絡がほぼ同時に来る。
あのリネージュが携帯でできると。
またやってみないか?というお誘いだ。
所詮は携帯でのMMO、リネージュ1を超える楽しさやワクワクはないだろう、ただ少しだけ触ってみよう。
そんな感じだった。
そうして久々に我とケレニスは、ケレニスが料理長をするレストランでリネージュ談義をした。
ケンラウヘルサーバーってのがあるんだ、事前登録で「ケンラウヘル」で取れるのかな。
ああ、取れた、取れちまったよ、じゃあお前、ケレニスで取ってみろよ。
おお、これも取れた、面白くなってきた。
ケンラウヘルサーバーのケンラウヘル、そして配下のケレニス、最強コンビだな。
シゲルはそういうのあんまり興味ないだろうし、あの人はうちらが何言っても聞かないから、好きにさせていいさ。
じゃあ俺が血盟作るよ。
でさ、俺やりたいこと2つあるんだよね。
一つは反王になりきるんだ。
ロールプレイだよロールプレイ、それが楽しいんだよ。
そしてもう一つは、反王による絶対君主制、独裁政権さ。
人の意見なんてどうでもいいんだ、俺が好き放題やるんだよ。
人なんて絶対ついてこないさ、いやついてこなくていいんだ、俺の、いや、我の思う存分好きにするんだから。
昔は人を楽しませる事ばかり気にしてただろ?
それで疲れて嫌いになったんだからさ、もうあんな風にはなりたくない。
でも今回は違うんだ。
コンセプトは「我が楽しむ為の血盟」だ。
血盟名か、何かこういいのないかな。
ケンラウヘルサーバーのケンラウヘル血盟のケンラウヘル?
面白いけど面倒くさいさそんなの。
横文字にするか、Destinyとか、Dragonとか格好いいよな。
いっそのことDestinyDragon血盟とかどうだ。
だがあんまりピンとこないな。
よし、こういう時はコンセプトに戻ればいいんだ。
我が楽しむための血盟だ、うちに来た奴らは全員「我が楽しいと思う方向に進む為の駒」だ。
全員我を守るために存在するんだ。
分かるかなケレニス、我が言いたいのはロマサガでいう所の「インペリアルガード」なんだよ。
我が「インペリアルガード!」って叫んだらさ、一糸乱れぬ感じで十字に陣形整える感じ、ああいうのがいいんだよ。
Anti King Imperial Guard
長い、これ多分、血盟名入り切らないぞ?
じゃあさ、横文字じゃなくて、日本語にしよう。
決まった、これで行くぞ。
“反王親衛隊”
ダサい?格好悪い?ネタっぽい?もっといい案ないのか?
そんなんはいいんだよ、だって。
我が楽しいんだから。
“質問受けます”が本当に伝えたかった事
そして今に至る。
そこらへんについては過去のブログを見てくれればいい。
ブログを初めたのは血盟員を募る為だった。
その中でもいつも根幹にあるのは“質問受けます”との約束だった。
この約束はMMOに限らず、我のリアルでも、人生でも大きく影響している。
ただ、昔と違う点は唯一、自分が心の底から楽しんでいる事だ。
少し長くなったので要点だけ話す。
この状況になって、15年経ってようやく理解できた。
楽しさを伝える事というのは人に楽しんで貰う事ではない。
自分が楽しんでこそ楽しさは伝わる。
これが我の今の核となっている。
今日の締め
すまん、何が言いたいかというとだ。
最近、ブログを更新しようとすると、チラと頭の中に自分ではない第三者視点でブログを見ている我がいる。
見ているだけならばいいのだが、評論家よろしく、ああじゃないこうじゃないと頭の中でゴチャゴチャ煩い事が多くなってきた。
じゃあ我が何をしたいのかを文章に起こしてみればいいだろうと、そう思って書いたに過ぎぬ。
落ちらしい落ちはないが、まぁたまにはこれで締めてもバチは当たらんだろう。
あんまりこういうのを言うと興ざめかもしれぬが、もしリネレボをしていて悩んでいる盟主とか幹部とか、つまらない思いをしているリネレボユーザーがいたら、この記事を見せてあげて欲しい。
リツイートでも何でもいい、なるべく多くの、心の底から楽しめていない者たちに届けばと願う。
これこそが、我のMMO最初の“約束”なのだ。
以上。