総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。
妖怪谷の妖怪符で手に入れた祝福防具強化スクロール30枚。
寝ぼけていたためか、それをマーブルなしで誤って連打。
気付けば鎧が25から20になっていたという事故から早3日。
戦闘力が200万に載ったらTwitterにアップしようとしているのにも関わらず、その夢がまた遠のく。
そんな状態を笑い飛ばしてから始める今日の手記。
反王過激派組織筆頭
前回の手記では反王過激派について話した。
※前回の手記
反王過激派のnanojigenの狂信者っぷりは理解してもらえただろう。
だが、そんな彼女も反王過激派の中ではNo.2。
本当の狂信者、反王過激派の始祖は
反王親衛隊”不滅の盾”、シリエンナイトのユウスケ2に他ならない。
環境の変化
ログを見ながら当時を思い返すとする。
2017年の12月。
要塞戦実装から1か月くらいだろうか。
我が軍では専ら要塞戦についての議論がされていた。
答えなんてない、だがどうやったら勝てるのだろうか、皆で知恵を絞り、そして我もそれを分かり易く資料にまとめ皆に共有する。
そういった最中ではあったが、若干予想外の出来事が起こっていた。
我の手記「反王だもの」についてである。
この手記を始めたのは2017年9月4日から。
この手記は血盟員を募集するために書き始めたものだ。
MMOというもの、しいてはオンラインゲームというものは、ゲームだけが面白いわけではない。
オフ会だったりオフラインイベントだったり、そして創作活動など。
いくらでも楽しみというものは溢れているものである。
では何故それらが「楽しい」のか。
我が思うに、MMOにおける「楽しさ」というのは、全てにおいて「ドラマ」があるからだ。
強化成功したにしても、それまでの苦労、いくら課金したのか、過去にこんな失敗をしたなど。
そこには必ずドラマがある。
オフ会もただダベるだけでも楽しいが色んな事がある、つまり、色んなドラマがあるからこそ楽しい。
そして「昔ああだったよなぁ」と、昔話に華咲かせられるような、そんな事が詰まっているのがMMOなのだ。
話を戻す。
だいたい11月頃からだろうか。
我の周り、しいていえば「反王だもの」や我のTwitterにてちょっとした異変が起こっていた。
我のブログを見てわざわざサーバーを超え、キャラまで作って感想を伝えてくれる者が多発していたのだ。
これは純粋に嬉しいし、我もより楽しくなってくる。
ただ、誤算が一つあった。
嬉しいのは嬉しいのだが、我の「ささやき」が処理しきれないくらい膨れ上がってしまっていたのだ。
ログを辿ろうにも、結構強めに全力で下にスワイプしても、一番下まで届くのに12〜15スワイプくらい必要な数だ。
慣れてきてはいたものの、なかなかに大変な作業であった。
夜中放置しておき、朝目が覚めて見てみると、ほぼ毎日ささやきの吹き出しタブがチャット欄の上を飾っていた。
毎日見すぎてゲシュタルト崩壊し、あの「吹き出しアイコン」がちょっとした妖精の類に見える錯覚を覚えたくらいだ。
季節はちょうど12月に入った頃。
クリスマスイベントは何だろう、マーブル沢山手に入ったらいいな、でもアデナもないしどうしようか。
そういえばLRT、ケンラウヘルサーバーではEmulatorsが出るんだよな、サーバー代表として頑張って欲しい、などなど。
他の血盟となんら変わらない、いちリネラーとして楽しんでいた時期であった。
出会いと緊急事態
あれは確か血盟ダンジョンが終わってひと段落した時だった記憶がある。
ちょうどログインしている最中にささやきが来る事は珍しい事ではなかった。
ポンと出てくる囁きアイコンと、チャット欄がピンク色に染まる。
かなり丁寧な文言であった。
これがユウスケとの最初のコンタクトであった。
その時我は結構忙しかった。
沢山の者から送ってこられるささやきを一回一回見て返信するのではなく、1日1回程度、一気に返す手法をとっていた。
雑に扱っているとかそういうのではなく、そちらの方が効率的であったからというのが大きな理由だ。
最初、このユウスケも「ブログの感想」を送ってくれた一人だと思っていたのだ。
ケンラウヘル「また感想が送られてきた」
ケレニス「今日何件目だ?」
ケンラウヘル「多分、4件目くらいか」
ケレニス「流石プロブロガーwww」
冷やかし混じりの声でケレニスが我をいじりはじめる。
書いている時はこんなにも沢山の人が見てくれるとは思ってもいなかった。
「よしてくれ」と一蹴しながらも日課を続ける。
日課の最中でも、ユウスケは熱心に我のブログの感想を語ってくれた。
あの水色戦士事件の話か。
※過去ブログ参照
あれはあの事件が発生した時を思い出しながら書いていて、我ながら見返すと今でも笑えてくる。
ちょうど「FaceApp」というアプリが周りで流行っていて、「写した人物を笑顔にする」というので試しに自分のキャラでやってみたら
この真面目な顔が、
こうなった時の衝撃たるや。
まぁそれはおいといてだ。
簡潔に言うと、リネ内でも、リアルでも色々あってリネレボを辞めようと思っていたが、偶然我のブログを見て、「楽しくなければリネじゃない」というコンセプトと方向性に感銘を受た事で、リネレボを続けようと思った、そして反王親衛隊に入りるチャンスをもらえないか、という所だ。
本当にブログ冥利に尽きる。
書いていて良かったと、毎回感想を貰うたびにしみじみ感じる。
それがまた次も書こうという意欲に駆られるわけで。
とにかく熱い者であった。
しかし、ここである異変に気付く事になる。
ケンラウヘル「・・・ケレニス」
ケレニス「ん?」
ケンラウヘル「さっき感想くれた人いるだろ?」
ケレニス「ああ、あの熱い人ね」
ケンラウヘル「まだ返信ひとつ返してないのに、ささやきが流れ続けて来るんだが・・・」
ケレニス「は?結構時間経ってるぞ?」
そう。
異変とはささやきが一方的に延々と流れ続けてくる事だった。
時間にしたら30分くらいだろうか、とにかく量が尋常ではない。
しかも書き方が古風というかなんというか、大河ドラマで例えるならば
将軍に宛てた巻物風の手紙といったところ。
丁寧を超えて馬鹿丁寧な言葉。
そして何より熱い。
熱すぎる。
心というか魂の籠った、いや、魂を削ったような文章。
長い、そして熱い、いやアチィ。
我への感謝の念が凄い、凄すぎる。
見ててこちらが恥ずかしくなるとかそういう類のものではない。
どれだけ我に対して尊敬の念を抱いているのか、そしてどれだけ我に対して決死の想いでささやきを送っているのか。
見ているだけでこちらも思わず熱くなる、心を揺さぶられるような文章なのだが。
何だろう、ちょっとそういうのとも違う。
長い、とにかく長くて、熱い。
熱すぎる。
火というよりも炎、炎というよりも焔。
相手は下手に出ているのはよくわかる、かといって媚び諂った文章ではない。
そして我は結論に達する。
『グイグイ感』
そう、グイグイ感だ。
違和感の正体はこのグイグイ感だ。
話を要約する。
「僭越ながらもし私も主殿の血盟に入らせて貰う事は可能でしょうかいや話しかけるだけでも大変失礼なのは分かっておりますしそんな立場の者でもございませんむしろこんな私なんぞの言葉を主殿に伝えるなどもっての他そうお耳汚しという事は誰よりもこの私が重々理解しておりますゆえけれどももしもですよ万が一億が一いや兆が一御血盟に入れるような採用されるようなむしろ面接をさせていただきます機会を少しでもほんの一握りでも針の穴程度の可能性でもあればぜひとも是が非でも全身全霊をかけて挑ませていただきたいのですが当然入れなくてもなにか少しでもお役に立てるようそしてブログは当然見続け応援し続けさせていただきたくそれを陰からでも主殿のために私め如き微々たる者ですが支えさせていただきたくですができれば傍で共にこのリネレボを楽しみたいという私の我儘がもし少しでも闇を照らす光となっていや主殿が光で私なんぞその光にすら当たるのもおこがましいので切腹してきますその前に是非とも何卒 Wish Upon a Star.」
みたいなイメージ。
言葉を慎重に選んでいるもの、溢れ出る思いが限界まで圧縮された空気砲のように我に絶え間なく襲いかかってくる。
正直ドン引きである。
長い。
熱い。
押し寄せる言葉の羅列。
熱い、熱すぎる。
思わず熱くなる文章というのは小説なのでよくある。
だがそういう類はまた違うのだ。
我が受けた印象は素直に「熱い」とかではなく、
放火のそれに近い。
火事だ、我が家が燃やされている。
生命の危機に陥った我は即座に幹部に報告をした。
来たささやきの長文全てをスクリーンショットした上で幹部Discordに貼り付ける。
シゲルマツザキ「これは・・・」
ケレニス「キャラが濃いってレベルじゃないぞ・・・」
ふじあむ「絶対あれだろこれ・・・」
ケンラウヘル「都市伝説では聞いていたが・・・これが・・・」
ケン・ケレ・ふじ・シゲル
「”狂信者”・・・!」
狂信者の品格
続ける前にひとつ。
時系列的に言えば、我が軍にユウスケがコンタクトをとってきたのが2017年の12月、後の反王過激派となるnanojigenが入って来たのは2018年の3月。
前回の手記ではnanojigenについて書いた。
何故、後から入ったnanojigenを先に手記で紹介したのか?
出オチ感が半端ないからである。
ただただ純粋にそれだけの理由だ。
nanojigenはいたって話していると普通の者だったのだ。
あくまで「内面的狂信者」「潜在的狂信者」であり、我を貶したりしなければ至ってコミュニティの中心人物なのだ。
だがユウスケは違う。
全然違う。
入り口から違う。
部屋の奥深くのクローゼットの屋根裏に通ずる隠し扉と、真向正面突破というかそこ壁なんだけど壊さないでくださいくらい違う。
隠そうともしない外面から出てくるこの狂信者っぷり。
いや、実際にキャラは見ていないのだ。
見ていないのにも関わらず、この文字からにじみ出てくる
明らかに近づいちゃいけない人オーラ。
カモがネギを背負って来たような。
いや、爆弾が聖火片手に全力疾走してるような彼。
だが当時、まだまだ我が軍は戦力不足。
しかも我が軍にはシゲル一人しかいなかった待望のシリエンナイトだ。
戦闘力もほぼ問題ない。
幹部会での協議の上、我が軍はこの聖火ランナーを受け入れる事にした。
狂信者ならば我の制御が効くから大丈夫だろうと見込んだのだ。
そう、「我の言う事は絶対に聞く」という自信があった。
恐らくツッコミを入れたら問題だらけではあるのだが、ちゃんとした問題は別に1件あった。
彼はまだ他の血盟に所属していたのである。
我は基本的に(よっぽどのことがない限り)「引き抜き」という行為はしないようにしている。
必要ならばやることも辞さないが、変な恨みを買ったりする事もある。
我が軍は別にPK血盟でも戦争血盟でもない。
そういった事には慎重になるのが我の血盟運営スタイルだ。
この会話で我は彼を見る目が変わった。
何も考えぬような人間であれば、行きたい血盟で許しが出た、すぐにでもおいそれと脱退して加入申請を出すであろう。
あのグイグイ感からして周りが見えない奴に違いない。
しかし彼は現在の血盟、そして血盟主に対して忠義を尽くし、そして最後まで筋を通して自分の願いを叶えようとしたのだ。
我は確信した。
彼とは一緒にリネレボを楽しめると。
1週間後。
彼は約束通り元の血盟で筋を通し、その血盟最後の要塞戦を全力でこなした後、我が軍へ加入申請を出してきた。
当たり前だが、彼の情報は反王親衛隊全員に事前情報として共有しておいた。
『ステータスを”忠誠”に極振りしたような奴が来る』
しかも中々に強いときた。
皆の期待のハードルは爆上げ状態であった。
ケンラウヘル「では、皆挨拶を怠らぬよう。今から加入申請を受理する」
我が軍では新たな血盟員が加入してきた瞬間に名乗り口上を血盟チャットで迎え入れるのが習慣づいている。
新人からしてみると、加入申請が受理された瞬間に30〜40行くらいの名乗り口上が血盟チャットで流れることになる。
この瞬間は我もいつも好きだ。
結局覚えられるわけもないのだが、これこそが反王親衛隊の歓迎の儀式なのだ。
ユウスケが反王親衛隊に加入した瞬間、映画のマトリックスさながら、文字列が下から上へと流れていく。
何度も見た光景なのだが、いつ見ても圧巻であり、思わず吹き出してしまいそうになる勢いがある。
やっている方も楽しいのだ。
呆気に取られるユウスケであったが、血盟チャットで自己紹介をする。
ユウスケ2「皆様、初めまして。◯◯血盟からこの度反王親衛隊へと加入させていただいたユウスケ2と申します。あまりにもログが早くて追い付けずに申し訳ありません。憧れの反王親衛隊、全身全霊をかけさせていただく所存です」
謙虚ながらも反王親衛隊に入る事がよっぽど嬉しかったのか、感無量といった感じであった。
皆、こういうリアクションが大好きなのだ。
名乗り口上はやはり導入して正解であった。
こうなると狂信者ということも忘れ、皆が一斉彼について質問攻めを開始する。
前の血盟はどんな血盟だったのか、そこの血盟で要塞戦はどういう風にしていたのか、課金とか結構しているのかとかとか。
そんな最中、1件の事件が起きる。
●●●●●血盟の●●さんに血盟員Mシャドウズさんが倒されました。
突然のログ。
その前に、当時の我が軍、及びサーバーの状況を説明しよう。
ケンラウヘルサーバーでは群を抜いて強い血盟がいた。
一時期色々な所と戦争ないし抗争が続いており、「巻き込みPK」が結構頻繁に起こっていた。
PKを頻繁に行っていた血盟は特定の血盟のみだ。
だが、何の前触れもなく戦火というものは燃え上がるもの。
むしろ事前準備できてからの戦争という方が珍しいのではないだろうか。
その時は確か第一回LRTのため、ケンラウヘルサーバーは敵対などの垣根を超えて一つの血盟にまとまっていた。
だがそれは燻る火の粉が裏で跳梁跋扈するタイミングでもある。
特に表には出てこないが潜在的にカオスを欲し、導火線に着火されるのを涎を垂らしながら待っている者たちを相手にすると厄介だ。
他血盟との関係性や外交、そして血盟員の管理が問われていた。
当時はレベルを抑えたりして強化スクロールを貯めるなど、5分か10分ごとに沸くボスを狩り続ける「中ボス放置」が流行っていた。
Mシャドウズはいつも中ボス放置をしていた。
今回Mを殺した血盟は全くもってノーマークであった。
血盟戦闘力ランキングには2ページ目くらいに載っているが特に変な噂も聞いたことがない。
ただ気になったのは、「その血盟に対してあまりにも情報がないこと」であった。
我のコネクションも結構広く網羅していたつもりだが、この血盟、盟主はおろか血盟員の一人すら心当たりも見た事も無い者たちばかり。
かといってサブキャラばかりかといったらそうではない、9割方メインキャラのようだった。
殺してきた者のレベルも戦闘力もそう高くはない、むしろ全体からして平均以下だろう。
嫌な予感しかしなかった。
狩場が被ったというだけで殺す者もいるし、殺す相手は誰でもよくてつっかかって来たら戦争に持ち込む。
何なら大義名分などでっちあげる者だっている。
面倒だなと思った。
ケンラウヘル「M、いないのか?放置か?」
ささやき、血盟チャット、Discordで連絡するものの返事はない、完全放置であった。
もしかしたら謝罪のささやきがMに行っているかもしれない。
もしくは最悪、煽りのささやきが行っている可能性もなきにしもあらず。
色んな思想が駆け巡る。
我の心配を余所に、血盟員たちは大盛り上がりだ。
「やるの?やるのか?」
「おのれよくもMシャドウズを…!」
「俺たちのMがやられた!」
「ちくしょう!仇を取るぞ!」
と、普段Mシャドウズをいじり倒している者たちがここぞとばかりに弔いという大義名分を掲げはじめる。
正直言ってMシャドウズ自身の事は100歩譲ってどうでも良く、それよりも「暴れる大義名分」が発生した事により、祭りやイベントよろしく、それらの「合図」となってしまった事が問題だ。
盟主というのはこういう時こそ真価が問われるものだ。
流されるのは非常に簡単ではあるが、己の正義や道筋に外れた事があればしっかりと正さねばならない。
現にそういった感じで流され流され、我が物顔で主義主張を押し通す輩の意のままに動く血盟はすべからく潰れる傾向にある。
我はこの祭りの空気を一蹴した。
ケンラウヘル「こんな事でいちいち面倒事を起こしていたら楽しめるものも楽しめん。我々は別に戦争血盟でもPK血盟でもない」
我は続ける。
ケンラウヘル「あちゃ、その●●●●●血盟について情報を集めてくれ」
あちゃぴぃ「御意」
ケンラウヘル「mutsuki、Mが死んでいる場所を探すよう頼む」
mutsuki「御意」
ケンラウヘル「Discordでのオーダーと共有、およびその本人については我が担当する。まだ敵対行動と決まったわけではない。相手の血盟主に連絡するのは何かあった時だ。以上」
「御意」
「御意」
「御意」
「御意」
我が軍のこういった切り替えは本当に気持ち良いくらい好きだ。
一糸乱れぬ「御意」の血盟チャット。
血に飢えたギラギラした血盟の雰囲気は瞬く間に消え去った。
「・・・ま、今日はこのへんにしといたろ」
「殺されたのがMさんだから別にいっかwww」
「相手がMで良かったよ本当www」
「むしろMさんを殺したという事は…逆に味方の可能性ワンチャン?w」
「それはMさん不憫すぎるwww」
という感じで、最終的には何故か「Mシャドウズが悪い」というとんでもないとばっちりに話が発展していく。
殺された挙句、勝手に悪者扱いにされているMシャドウズが不憫でならない。
いつのまにか血盟の空気は笑いの空気になっていた。
ケンラウヘル「まぁそんな感じだが、この血盟に関する情報は全く分からんから、あちゃ、mutsukiは引き続き頼む」
あちゃぴぃ「御意」
mutsuki「わかりました」
ケンラウヘル「ただ実際に敵対行動かもしれんし油断はならぬ。ピンポイントで狙ってくる可能性もある。また次あったら見つけ次第殺すまでさ」
突発のイベントはこうやって静かに幕を閉じた。
だが専ら話題はこの殺してきた血盟の話で持ちきりだった。
お!ここスカベンジャーいるじゃん、結構強いな。
こいつのネーミングセンスやばいなwww
そんな感じで盛り上がっていた。
あちゃぴぃ「盟主、戻りました」
ケンラウヘル「ああ、あの血盟はどういう感じだったか?」
あちゃぴぃ「ええ、血盟について軽くですが、色々聞いたり調べたりしたのですが、あまり目立った者はいないかと」
ケンラウヘル「ではPK血盟とかイケイケの血盟ではないと」
あちゃぴぃ「間違いないです。ただ殺してきた●●という者については全く情報が掴めず、もしかしたら個人で敵対行動してきた可能性も」
ケンラウヘル「まぁどちらにしろ話してみないといけないか」
mutsuki「Mさん、死の沿道3chですね、パーティ招待検索で出ました」
ケンラウヘル「そうか、まぁ相手も同じチャンネルにいる可能性もある、誤って敵意放置の可能性もあるからな、3chの中ボスを一通り回ってみるか」
mutsuki「御意」
相手の情報は分からぬが、とりあえず索敵だけしてみよう、そういう流れになった。
とにかく「相手が我が軍および血盟員に対して敵意がない」ということだけは早めに知りたかったのだ。
だがこの流れで一つ忘れていたことがあった。
先程入ってきたユウスケを完全に放置してしまっていたことを思い出す。
入ってきたばかりでいきなりPKだの物騒な話で盛り上がっていたら血盟自体を勘違いされてしまう。
血盟が戦争やPK血盟ということなら覚悟の上だろうが、勿論我が軍はそんな血盟ではない。
少なくとも、不明確の状況で流れに身を任せて動くような血盟ではないと言っておこう。
ケンラウヘル「しまった、ついPKに気を取られてしまった。新しく入って来たユウスケの歓迎をせねばな」
「忘れてたwwwごめんごめんwww」
「これも全部Mさんの所為だな」
「Mさん可哀想www」
そんな感じでユウスケの歓迎会話が再び動き出した。
いきなり入ってきた瞬間にやれPKだのやれ殺せだのと物騒な血盟だと思われたら困る。
ここはしっかりとキメなくては。
ケンラウヘル「さて、では改めて」
ケンラウヘル「よく来たユウスケ。そしてようこそ、我が反王s
血盟員のユウスケ2さんが●●●●●血盟の●●さんを倒しました。
ユウスケ2「殺しました。」
ケンラウヘル「え」
ユウスケ2「殺しました。」
状況を整理しよう。
確かにMシャドウズが殺されて一時的に闘争の空気が盛り上がった。
うん、確かにそうだ。
だが結局は相手の血盟についても分からぬし、Mに囁きがいってるかもしれない。
うん、だから結論としては「とりあえず話してみて相手の出方を見る」という話で終わったはず。
恐らく120%違うと理解しているのだが、念のための確認をする。
ケンラウヘル「・・・それは採集所とかではないよな?」
ユウスケ2「死の沿道3chです。」
ケンラウヘル「・・・」
ケンラウヘル「・・・あれか、やっぱり相手は敵意放置だったのか、であれば何もm
ユウスケ2「狩り中にヒドラでスタンさせてから即死させたので分かりません。」
ケンラウヘル「・・・」
ケンラウヘル「でもあれだろ?確か相手のレベル低いから一発赤ネじゃないのか?」
ユウスケ2「はい。」
ケンラウヘル「・・・」
ケンラウヘル「・・・えっと、そうなるとデバフが付いてしまっているのでは?」
ユウスケ「問題ありません。」
ケンラウヘル「・・・良心の呵s
ユウスケ2「問題ありません。」
おめぇ自身の良心の呵責を少しは持てよ!!!!
と、その場にいた血盟員全員が心の中で叫んでいたに違いない。
しかし、こんな事で取り乱してはいけない。
我が名はケンラウヘル、そう、反王である。
ユウスケからすると、憧れの血盟に入ったばかりで緊張していたに違いない。
少しでも早く溶け込もうとしていたに過ぎぬ。
狂信者らしく、少しでも我の役に立とうとしたのであろう。
だがこれは歴とした「命令違反」に他ならぬ。
ここで流れに身を任せてなぁなぁに終わらせるのは反王親衛隊の運営に支障をきたす。
然とした態度で彼を律することこそ、我に与えられた役割(ロール)なのだ。
ここはひとつ、きっちりと締めねばなるまい。
ケンラウヘル「ユウスケ」
ユウスケ2「はい」
ケンラウヘル「今回は入ったばかりということで許そう、しかしこれは歴とした『命令違反』。以後、我の命令に背くような行為は慎むようにしろ」
ユウスケ2「ッ!!申し訳ありません・・・」
ケンラウヘル「それでいい、今回の事は我が後処理をする故気にしなくていいが、次はない、心せよ」
ユウスケ2「申し訳ありません…」
ユウスケ2「主殿の命令に忠実に従ったつもりだったのですが、意に沿えず申し訳ございません」
ん?
ケンラウヘル「従った?どういう事だ?」
ユウスケ2「はい、主殿が
ユウスケ2「”次あったら見つけ次第殺せ”、と。」
しばらくの思考。
そして結論に達する。
ケンラウヘル「・・・なるほど。なるほどなるほど。なるほどなるほどなるほど」
ケンラウヘル「ユウスケ、悪かった、我が悪かったのだ、うむ、貴殿は悪くない。そこで改めて、今から命令を出す、よく聞くのだ」
ユウスケ2「はい」
ケンラウヘル
「”次会ったら見つけ次第殺す”のではなく、”次同じ相手から攻撃されるようなことがあったら見つけ次第殺す”だ。分かったか?」
ユウスケ2「仰せのままに。祖国に光を。」
祖国もお先真っ暗だよ馬鹿野郎!!!!
かくして突如やってきたはじめての狂信者の反王親衛隊デビューは、わずか入隊15分で他血盟員を切り殺して赤ネになるという斬新な手口で華を飾ったのであった。
こう振り返ると、ユウスケとも色々な物語があったとつくづく感じる。
そしてまさか書き始めた時には長すぎて前後編に分けなくてはいけないなんて思ってもいなかった。
引き続き次回は「はじめての狂信者(後編)」、アカウント連動失敗した狂信者~現在の狂信者の姿を書こうと思う。
今日の調査報告
狂信者という歩く狂気が鮮烈なデビューを放った翌日。
起きてきたMシャドウズに話を聞いても、殺してきた彼からの連絡はないとのことだった。
我からの囁きにも反応なし。
だが敵対行動を取ってくるような事は微塵も感じられなかった。
我としては狙って敵対行動を取ってくるような事がなければ何もしないつもりだった。
下手にこれを相手の血盟主に言うと話がこじれたりする可能性もある。
我の出した結論は「しばらく様子見」であった。
ケンラウヘル「・・・という感じでいこうと思う」
あちゃぴぃ「御意、問題ないかと」
ケンラウヘル「しかし、狂信者というのは恐ろしいものだな」
あちゃぴぃ「取り扱いには注意ですね」
ケンラウヘル「後で反王親衛隊”対狂信者マニュアル”でも作っておくか」
あちゃぴぃ「ここから増えてくる可能性もありますからね」
ケンラウヘル「・・・して、あちゃ、例の調査の方はどうだ」
あちゃぴぃ「はい、色々と聞きまわったり調査したのですが、『ユウスケ2』については特記するような事もなく、全員が全員”とてもいい人で温厚な人”としか」
我は殺してきた血盟員よりも、ユウスケ自身の調査を裏で進めていた。
ユウスケとのささやきでは得られない情報が他にもあるかもしれないからだ。
例えば、やたらPK好きとか、血盟の事も考えずに行動して血盟に迷惑をかけるとか。
そういうものはないかという事だけ確証が欲しかった。
それくらい彼のデビューは鮮烈であったのだ。
ケンラウヘル「特にどこかとの衝突や因縁、対人好きとかそういうのもない、という認識でいいだろうか」
あちゃぴぃ「はい、間違いなく」
ケンラウヘル「まぁなら安心だな。本当にあとは取り扱いだけ注意すれば問題なさそうだな」
あちゃぴぃ「私も同意見です」
ケンラウヘル「よし、懸念点は払拭された!さて、ユウスケはいいとして、あとは相手の出方次第だな、また何か動きがあれば報告を」
あちゃぴぃ「御意。・・・そういえばユウスケについて、もう一つ情報が」
ケンラウヘル「ん?なんだ?」
あちゃぴぃ「いや、大したことはないのですが、”いい人”以外にもう一つ、調査した皆が共通して言っていた事が・・・」
ケンラウヘル「共通して?それは重要な情報じゃあないか。細かい話でもいい、ユウスケについて知りたい、それは何なんだ」
あちゃぴぃ「あ、はい、調査した結果、全員が全員ユウスケについて共通して言っていたのは」
あちゃぴぃ「反王ブログの熱狂的ファンとのことです。」
ケンラウヘル「うん、知ってた。」
以上。