あまりにも忙しく、濃く、そして愚かな時間を過ごした。
これはただの日記帳、独り言、そして自分自信への教訓。
思いのまま綴る。
飛行機では必ず窓側の席を選ぶ。
窓側の席が取れない場合は時間をずらしてでも飛行機の予約を変える程のこだわりがある。
通路側、もしくは3列ある真ん中の席などに座る事は苦痛に値する。
乗務員が飲み物を配ったりする際、私の目の前を通過してやりとりが行われることになる。
ましてや窓側の人が手洗いへ立ったらどうあがいても席を立てねばならない。
同時にまた帰ってきた際にも同じ行動を取る苦痛。
いつ帰ってくるかわからない状態で寝る事もままならぬ。
そんな状況が居心地が良いという人がいるというのであればそれは稀有と言わざるを得ないだろう。
席を立ったり座ったりという物理的な動作、睡眠の妨げといったものが億劫という訳ではない。
人と関わりたくない。
その一点に尽きる。
関わることでどうなるか自分で理解しているからだ。
人と関わるとどうなるか、必ず気を遣うことになる。
人が何を考えているのかを感じ、それに合わせて動いてしまう。
サイコパスという言葉は知っているだろうか。
アニメのタイトルなどでも使われているのでこの言葉は今や一般化しているだろう。
これに関してソシオパスという言葉も存在する。
ほぼ同じではあるが、基本的に前者は先天的、後者は後天的なものである。
両者に共通する点とすれば、
・日常的に法を犯す、または法を軽視している
・常に嘘をつき、他者を騙そうとする
・衝動的で計画性がない
・喧嘩腰で攻撃的
・他者の安全性についてほとんど考慮しない
・無責任で、金銭的にルーズ
・良心の呵責や罪悪感がない
以上の点が挙げられる。
全てが当てはまるとは言わないが、これにかなりの数当てはまれば間違いなく素質があるといえるだろう。
ではサイコパス、ソシオパスとは逆の症状を知っているだろうか。
それをエンパスという。
エンパスの特徴を一言で言うと「共感力の高い人」のことを指す。
ただ優しいとか、想像力があって共感しているのではなく、「他人の感情を自分の感情のように感じてしまう」といった体質のことだ。
つまり、人の感情に過剰に影響を受けやすいというもの。
このエンパスは具体的に以下のような行動や思考に至る。
・相手の気持ちが手に取るようにわかる
・感情の振れ幅が大きい
・人混みが苦手
・絶対に1人の時間が欲しい
・自然が好き
・自己犠牲の精神
・依存体質になりがち
サイコパスやソシオパスについては社会でも話題性やエンターテインメント性が強いが故に認知されやすいが、エンパスにはついて触れられないのは刺激的な内容ではないからだと推測している。
エンパスにとっては飛行機は非常に苦痛な時間になりがちだ。
そんな苦痛を和らげるのがノイズキャンセリング付きのイヤホンだ。
ノイズキャンセリング付きイヤホンは本当に環境音というものを消して完全に音楽の世界に没頭することができる。
初めてAir Podsを装着した時にその効果に惚れ込んだ。
世界と自分を完全に切り離してくれる、魔法のようなアイテムであり、スマートフォンと同じくして生活に欠かせないものになっている。
飛行機の窓側の席、ノイズキャンセリングのイヤホンで好きな音楽を聴いている時が本当に心が落ち着く。
何もできない環境下でひたすら自分の世界に没頭する。
いや、没頭するのに疲れた頭を切り離して束の間の別世界を味合うといった表現の方が適しているだろうか。
そして音楽選びも重要だ。
心が躍っているような時はハイテンションの曲を聞く。
曲調や歌詞、ベースやドラムなどの重低音全てに感情移入してその曲に合わせた体調に持っていく。
ただ飛行機の中でテンポの速い音楽を聴くのは稀だ。
窓から見える景色を見ながらただただ世界に没頭する。
没頭するのは無の世界だ。
無の世界は本当にいい、雑多な言い方をすれば頭の中をリセットするという表現をする者もいるだろう。
ただもっと本質は深く、黒い。
色という表現とはまた違う、深淵のような世界。
例えるなら宇宙のような存在。
目の前を遮る闇ではなく、透明感があってどこまでも続く空間のようなもの。
そんな空間を頭の中に作る為に聴くのは「深海の音」だ。
鼓膜を伝わる地球が奏でる不定期な重低音。
生命から湧き出る小さな気泡たちが生まれては消える音。
そこには前後上下左右もない無重力の空間。
ただ宇宙のような何もない空間ではなく、何かしらに包まれているような安心感がそこにある。
乗客の搭乗が全て終わり、飛行機が動き出す。
何も考えずに外を眺めながら、その景色と身体にかかる重力で飛行機の動いている方向を感じる。
滑走路に飛行機が到達する。
加速する重力を身体で感じると同時に、ノイズキャンセリングでも消しきれない巨大なエンジン音が深海を微かに揺らす。
地面とタイヤの摩擦が足元を揺らし、機体前方からゆっくりと傾く。
ふと足元の振動が消失して飛行機が地上から離れる瞬間を感じる。
窓から見える近くの風景が徐々にドット絵のように小さな点になると同時に、薄いグラデーションのかかった青空が窓に映る絵を塗りつぶしていく。
その時いつも心の底からこう思う。
この飛行機、落ちてくれないかな、と。