総員、我が名はケンラウヘル。すなわち反王である。
最近は我が軍は毎日のように血盟ダンジョン討伐をしている。
参加するメンバーは日によって様々ではあるが、大体戦略が確立してしまってルーチンワークのようになってしまっているのが難点だ。
それでも報酬がうまいから当然やるのではあるが。
そんな我が軍は血盟寄付こそそこそこあり、血盟ランキングも10位代ではあるが、やはり要塞戦では苦戦必須である。
しかし、我が軍の誇れるものが1つある。
コア図鑑ランキング1位のilluminaである。
何よりもコア集め優先で、その数は現段階で722。
コアハンターといっても過言ではないだろう。
アジトには常に召喚石が張り巡らされ、皆でどんどん回している。
最近ではilluminaのコア集めを手伝うべく、我も含めて血盟全体で協力しているのだ。
そしてルーチンワークと化している血盟ダンジョンのマンネリを打破すべく、血盟員のふじあむとまーもから「血盟ダンジョン後のコア集め召喚石を皆でやろう」との提案が。
我が軍はこういった提案があるから非常に助かる。
しかもまーも曰く、「血盟強化効果にコアドロップ20%アップがあるから、それを使う」との提案が。
何か違和感があったものの、仲間のためにブルーダイヤ消費とは粋なはからないだ。
我は現在ブルーダイヤを貯めている最中、これは非常にありがたい。
ということで血盟ダンジョンはいつもの我がひたすら張り付いて戦うスタイルでクリア。
そうして始まるコア集めの宴。
参加者が多かったので3パーティ、各々のパーティで好きな召喚石を回して挑むことに。
準備は整い、血盟強化効果をまーもが発動させるのを心待ちにする。
しかしなかなか始まらない。
凄い嫌な予感がする。
うむ。嫌な予感的中。
だって血盟ショップの中ではあるけども、
『血盟”主”ショップ』にあるのだから。
なんだまーもや周りの輩たち。
さも「自分たちが出しますよー」「盟主には迷惑かけないから大丈夫ですよー」的な感じでさっきまで会話していたではないか。
これが認知的不協和というやつか。
答えがAだと確信していても、教室の皆がBと答えていたら、答えが実はBなんじゃないかと錯覚してしまうというあれか。
ドラマのライアーゲームで得た知識がここで出てくるとは。
我が右腕のふじあむは状況が把握できたのだろう、即皆に「せっかく集まったんだから召喚石回そう」という提案をしてくれた。
だが、
”この”クールだけという言葉が引っ掛かる。
この画面から伝わってくる血盟員のがっかり感と期待の眼差し。
プレッシャーが半端ない。
決して我が発案者ではないのに、なぜか責任を感じる盟主病。
気付くと我は、ブルーダイヤが400減っていたのだった。
うむ。これで良い。
例え血盟員の勘違いとはいえ、悪意のない間違い。
そしてこの血盟員の喜びよう。
我はこれで満足だ。
こんなことで決して頭に血が上るような人間ではない。
我は反王、そう、王の器を持つ男だからな。
王の器を持つ男だからな。(2回目)
ということで、血盟主ショップのコア獲得増加強化効果を使用してみた。
使用と同時に青い花火が上がり、いざスタート。
1時間みっちり様々なコアを狙っていったが、
まぁコアのドロップがどんどん貯まるのなんの。
1回の召喚石で、Nであれば80個~120個は貯まる。
さすがブルーダイヤ400個の効果は伊達ではない。
ただのオートではなく、左上、左下、右側、中央などと担当を決めることで更なる効率アップもできた。
召喚石祭りは結果として大満足に終わったのである。
しかし、これはかなりの劇薬。
いや、麻薬のような依存性が高くなる可能性もある。
何より一番怖いのは盟主が全負担というところだ。
盟主の気も知らずにはしゃぐ血盟員たち。
しかし我は反王。
ブルーダイヤ400個でこれだけ血盟が盛り上がるのだ。
我は反王、王の器を持つ男。
ここはひとつ、これごときのプレッシャーなどもろともせぬ、我の器のキャパシティを見せつけてやることにする。
見よこの余裕、恐れ慄くが良い。
(青ダイヤ的な意味で)
■今日のツボ
我が軍の血盟チャットはなかなか盛んである。
なんとなく見ているだけでも暇をしない。
そして誰かが愉快なことを言うと、それに対してリアクションがある。
言葉のキャッチボールだ。
よく下々の者たちは面白い時に「w」を連打する癖がある。
ネットスラングというやつだ。
我は反王。そのような下賤の者たちが使うスラングなどを使うことはない。
しかし、ふとしたチャットを見た瞬間、我の中で電撃が走った。
最後のケレニスの言葉、一瞬わからなかったがすぐに理解することができた。
「一富士二鷹三茄子」
初夢で見ると縁起が良いとされるこの故事を、我が血盟員の名前を使って文字ったものだ。
1ふじ
2ダレ
3NASUりー
なんという語呂の良さ、故事をチョイスするセンス、そして
2番目の雑な感じ。
常人には理解できないかもしれないが、正直、我の完璧な笑いのツボである。
思わず「w」を連打しそうになったが、その衝動を抑える。
しかし、リアクションせずにはいられない。
10秒程迷ったあげく、思わず打ち込んだ文字。
思わず王から麿(まろ)になる。
王とはつらいものである。
以上。